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クラウン2-Lesson02

Lesson02

Dreamtime −Australian Aborigines and the Art of Living−

夢幻時─オーストラリアのアボリジニーと生の芸術─

芸術はモノではない。方法である─アルバート・ハバード─

「原始的な」人々による古代芸術にはとても現代的に見えるものもあります。どうしてそんなことがありうるのでしょうか。アーストラリア出身の外国語補助教員のジョン・ケリーはオーストラリアのアボリジナル・アートについて説明します。

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今日はあなた方にアボリジナル・アートをいくつかお見せしたいと思います。「Aborigine」や「Aboriginal」という言葉はオーストラリアの先住民を指します。現在大多数のアボリジニーは他のオーストラリア人と同じ生活の仕方をしてはいますが、その約10パーセントはオーストラリア中央部の巨大な砂漠地帯に住み続けています。そこが彼らが何千年にも渡ってきわめて芸術的な絵を創り出してきた場所です。ちょっといくつか見本を見てみましょう。

絵1は「点描画」です。点描画は地図の一種だと信じられています。オーストラリアのアボリジニーは、動物や食用植物、水がどこにあるかを示すため地面に図を描きました。絵2は「樹皮画」です。これは樹皮に描かれてきました。ここには精霊や鳥、動物が見られますが、どれもみんな細い線で描かれています。交差した線を描くことによって影効果を生み出しています。絵3は「レントゲン画」の例です。レントゲン写真で見られるのと同じように動物の骨や内臓を見ることができ、そのため動物のどの部分が食べられるのかが分かります。こういった画法がアボリジニーによって何千年にも渡りずっと用いられているのは驚きです。アボリジニーによって編み出された画法は他にもたくさんあります。彼らはなぜそんなにも長い間、絵の伝統を守り続けているのでしょうか。

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その答えは、アボリジニーがどこから来たのか、彼らは何者なのか、どのような生活をしているのかを絵が物語っているという事実にあります。彼らは自分たちの民族の歴史、伝統、掟、知恵を、いわゆる「ドリームタイム」という形で伝えています。彼ら自身には書記体系がなかったので、アボリジニーはドリームタイムの物語を口頭で、また絵、歌、踊りで伝えてきました。彼らは数時間か数日、あるいは数週間も歌い踊り続けます。彼らの自然への敬意は、これはドリームタイムの物語の基盤になっているのですが、私達が今日忘れてしまいがちな知恵を思い起こさせます。ドリームタイムは私達の普通の時間の考えとはほとんど無関係です。過去、現在、未来は、ちょうど私達の夢のようにすべて混ざり合っています。ドリームタイムはアボリジニーにとっての現実であり、彼らの世界を形作り続けます。彼らにとって世界は途切れることのない円なのです。

この現実に関する考えは私達には奇妙に思えるかもしれません。私達は世界はバラバラな物事で構成されていると信じる傾向があります。けれども近代科学は、物事は何らかの形で組み合わさっていること、また、現実は私達が思っているほど明瞭なものではないことを示唆しています。言い換えると「原始的な」人々のとても古い考えは近代科学の考えととても近いのです。

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ではアボリジニーの歴史をちょっと見てみましょう。1988年、オーストラリアは入植200周年を祝いましたがアボリジニーには祝うべきことはほとんどありませんでした。1700年ごろに「発見され」、アボリジニーは自分達の土地を追い出されたり、「野蛮人」呼ばわりされたり、さらには殺されたりもしました。1910年から1971年にかけて政府は何千というアボリジニーの子ども達を家族から引き離しそして白人社会で養育しました。彼らが教育され「文明化」されることが望まれたのです。しかしながらこの計画は結局彼らの伝統を破壊しただけでした。彼らが土地と切り離されたという事実は彼らにとって重要な意味を持ちました。なぜなら土地は彼らの精神と魂の基礎が置かれていた場所だったからです。

人気のあるアボリジニーの音楽家であるアーチー・ローチはこの「盗まれた世代」の痛みについて歌います。

太陽まるく、月まるく─人生の旅も円を描いてぐるぐる回る
でももしこの円が途切れたら、どの道を行けばいいのか分からない
あなたは宇宙をさまよう、行方も分からず・・・


近年になって、アボリジニーと他のオーストラリア人を和解させようとする運動が起こってきました。1970年代から広大な土地がアボリジニーの管理下に戻されてきました。ウルル、すなわちエアーズロックはその一例です。 オーストラリア人がよりアボリジニーの文化を知り価値を認めるようになるにつれて、彼らは過去に起きたことに関して償いたいと思っているのです。アボリジナル・アートは、苦

痛と差別を克服するための、また生の意味を表現するための方法だと考えられます。それは生の芸術なのです。

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