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クラウン1-Reading1

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When Thoughts Froze in the Air ─すべてが凍った時代─

大昔、北国の島々は今よりもずっと寒かった。とおっても寒かったので、信じられないかもしれないけど、「考え」でさえも凍ってしまったのだ。例えば、もし「なんて寒いんだろう!」と考えたとすると、頭の上に氷の文字が現れて皆に考えていることが読まれてしまうのだ。だから寒い北の国の島々では皆がものを考えないようにしていたのだ。つまり皆他の連中に自分たちの考えを読まれてしまうかもしれないことを恐れていたのである。熊もペンギンもアザラシも、…だれも何も考えなかったのである。

    1

ある日のことセイ・ウチは自分専用の氷のベッドの上に寝そべっていた。目は閉じていた。セイ・ウチは「ええと、ええと」とただ考えていた。するとこれらの文字(ええと、ええとという文字)が彼の頭の上に浮かんでいた。突然ウナ・ギが海から頭をだした。
「ねえ、セイくん、知ってる?」とウナ・ギが言った。
「え?何?」セイ・ウチはゆっくり答えた。
「わたしね、南の国の島々から今帰ってきたところなのよ。そこはとっても暑いのよ。とおっても暑いから『考え』が凍らないの。」
「本当かい?」
「ええ本当よ。だからね、だれかが例えばあなたのこと見て心の中であなたのお尻がとっても大きいって思ったとしてもあなたには彼が考えていることを読むことはできないのよ。あんまり暑すぎて文字が凍ることがないのよ。」
「どいつだよ、オレの尻が大きいなんて言うやつは。」セイ・ウチは怒って言った。
「ただのたとえ話よ。ねえ、私たちこの寒いところから抜け出さない?人目を気にしないでものを考えることができるなんてなんて素敵でしょう!南の国の島々では考えたいことを何だって考えることができるのよ。」
「どんなことを考えたんだい?」
「ええと、太陽が緑だったり、2たす2が5だったり、そういうこと。」
「でも太陽は緑じゃないし、2たす2は5じゃないだろう。」
「分かってるわよ。でも考えたいことを何でも考えられるってのは素敵じゃない。それに誰にも何を考えてるか分からないのよ。」

    2

セイ・ウチ君は興味を覚え、彼らはでかけることにした。彼らは泳いで泳いで、さらにもっと泳いで、とうとう南の島についた。とても暑くて、海でさえ熱かった。セイ・ウチ君はまだ何も考えていなかった。
「ウナ・ギちゃん、いま何をかんがえているの?」と彼はウナ・ギに尋ねた。
「ただあなたのこと考えてたのよ、セイ君」
「ぼくについての何を考えてたの?」
「あ〜、教えられないわ。言ったらあなた怒るもの。」
セイ・ウチ君はウナ・ギについて悪く考え始めた。「彼女は馬鹿だし、喋りすぎだ。」と。
それと同時にセイ・ウチ君はウナ・ギも彼のことを考えているにちがいないと思っていた。南の国の皆がお世辞を言うのがとても上手だった。彼らはセイ・ウチ君に言った。
「セイ・ウチさん、お目にかかれてとてもうれしいです。」
「あなたってなんて素敵なんでしょう。」
「あなたはなんて頭がいいのでしょう。」
しかしながら、セイ・ウチは彼らは本当は彼がブサイクで馬鹿だと思っていることが分かっていた。彼は頭の中で次のように思った。「北の国では彼らの頭の上に氷の文字が浮かんで見える。(だから)彼らが本当に僕についてどう考えているのかが分かる。」と。南の国ではだれも何を考えているのかを話さなかった。そのことで彼は悲しくなった。

    3

それからある日、燃えるように暑い太陽の下で一人の男が妻と子どもたちと一緒にボートで川を下ってきた。男はウナ・ギのために歌を歌った。
こんにちは、かわいいウナ・ギさん。
あなたは何てきれいなんでしょう。
歌があまりにも美しかったのでウナ・ギは南の国の人々が自分たちが本当に考えていることを言わないということを忘れてしまった。ウナ・ギは歌い手の船の方に向かってしまった。突如その男(歌っていた男)はウナ・ギに向かって網をなげかけた。彼がウナ・を船に引っ張り上げ、彼の妻がウナ・ギを料理した。その家族はウナ・ギを夕食に食べてしまった。セイ・ウチはこれを見て衝撃に凍りついた。「なんてヒドイ!北の国では我々は安全だ。
我々は皆他の人たちが何を考えているのか読むことができる。」セイ・ウチは故郷に(北の国)に帰ることを考え始めまた。しかし、セイ・ウチはすぐには南の島を離れなかった。セイ・ウチは他の人たちが彼の考えを読んでしまうのではないかという心配なしに自由に考えるという思いに魅了されてしまったのだった。それでセイ・ウチは南の国に考え方を学ぶためにとどまったのだった。考えれば考えるほど、彼の思考はどんどん深まっていった。「私たちとは何者なんだろう?」「我々はどこから来たのだろう?」「我々は何故今ここにいるのだろう?」「我々はこれから何処にゆこうとしているのだろう?」

    4

こういったことをあれこれ考えた挙句、ついに自分が元いた場所に戻るのが一番だという結論に達した。そこで彼はノースランドへと出発した。彼は考えた。「もう考えなくていいんだ。なんて幸せなんだ。何にも考えるのはよそう。」
しかし彼は間違っていた。家に帰って特製の氷のベッドに腰を下ろすと、彼は考えを止めることがまったくできなかった。そしてもちろん、彼の考えはすぐさま頭から流れ出して凍った。くまやペンギン、アザラシなど彼の古くからの友達は彼の考えを読むやいなや逃げ出した。彼らは考えることはとても失礼だと思ったのだ。
かわいそうなセイ・ウチ!いまや彼は古い友達の悪いことしか考えられなかった。そうした考えは氷の文字で頭の上に現れた。彼の北国の友達との関係はどんどん悪くなっていった。ついに彼は氷のベッドの上で本当に一人ぼっちになってしまった。
それから北国はどんどん暖かくなっていった。考えが空中で凍ることもなかった。だから誰ももはや考えを読むことはできなくなった。しかしセイ・ウチは決まって一人きりだった。彼は考えることをしなかった古きよき時代を夢見ていた。彼は考えた。「ひどく寒かったけどなんて素敵で気楽な生活だったんだろう。」

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